子どものわきが対策には治療という選択肢がある

子どもたちにとって、わきがの症状は学校生活や友人関係に大きな影響を与える可能性があります。
子どものわきがは、家庭での対策だけでは十分な効果が得られないケースが多く見られます。制汗剤や日々の清潔ケアは重要な基本対策ですが、これらは一時的な対処療法に過ぎません。
現在は手術をはじめ、さまざまなわきが治療の選択肢も増えてきました。家庭でのケアだけでは悩みが消えない場合は、子どものわきが治療を検討してもいいかもしれません。
子どものわきが治療については、以下の記事もご覧ください。
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「アポクリン腺」を活発にするのは男性ホルモン

汗腺には主に「エクリン腺」と「アポクリン腺」があり、わきがに関係するのは、アポクリン腺から出るたんぱく質や脂肪などを含む汗です。それが皮膚の常在菌などによって分解されることで、わきが独特のにおいを発します。
アポクリン腺はもともとフェロモンを放出する器官であることから、性ホルモンと密接な関係を持っています。性ホルモンといってもアポクリン腺の働きを活発にするのは男性ホルモンです。
そういえば男性にわきがの人が多い気がする……と思うかもしれませんが、男女比としてはさほど大きな差はないどころか、むしろ女性のほうが若干多いという説もあります。
におい自体は男性のほうが強かったり、一般的にわき毛の処理をしないことで細菌が繁殖しやすかったりすることが、わきがは男性に多いという印象を与えているのかもしれません。

男性ホルモンが関係しているならば、女性のわきが体質の人は少ないのではと思うかもしれませんが、そもそも女性は卵巣や副腎、脂肪などでたくさんの男性ホルモンを分泌しています。
驚くことに、一生でスプーン一杯分ともいわれる女性ホルモンに対し、男性ホルモンの分泌量は約10倍と、むしろ女性ホルモンより断然多いのです。
わきが臭は成長とともに強くなる?
男性ホルモンの分泌量は
20代前半に向けて増加します
アポクリン腺とホルモンの関係は、子どもの成長とわきがの関係が深いことを表しています。なぜなら、男性ホルモンの分泌量は、第二次性徴期が始まる頃から20代前半のピークに向けてどんどん増加していくからです。
第二次性徴期とは、男子なら精巣、女子なら乳房や初潮といった男女性差において体が急発達する、いわば思春期のことで、ほとんどの子どもが小学校中高学年くらいにその時期を迎えます。これをきっかけにアポクリン腺一つひとつの働きが活発になり、わきがが発現するケースが多いのです。
成長するに従って遊びや部活動など運動量とともに発汗量も増えていき、そこへ男性ホルモンの分泌量も増えていくのですから、わきが臭もどんどん強くなる一方です。
子どものわきが治療法

わきがの治療法には、切開してにおいの元であるアポクリン腺を取り除く手術のほかにも、さまざまな方法があります。
以下で、手術を含む子どものわきがの治療法について、詳しく見ていきましょう。
▼剪除法
最も確実な治療効果が期待できる、標準的な手術法です。わきの下のシワに沿って数cm切開し、アポクリン腺を直接目視下で除去します。保険適用が可能な手術ですが、術後1週間の圧迫固定と1ヵ月以上の生活制限が必要となります。
傷跡が残るリスクがあることや、身体的負担がほかの方法と比較すると大きいこともあり、思春期以前の子どもの適用には慎重な検討が必要です
▼ミラドライ
ミラドライはマイクロ波を用いた「切らない」治療で、FDA(米国食品医薬品局)認可の安全性が確立された治療法です。発育途上の子どもへの施術が可能であり、小中学生への施術例も多くあります。
治療時間は約60分で、数日間の激しい運動は控える必要があります。
▼ボトックス注射
ボトックス注射は小学校高学年から施術可能な治療法で、脇の下にボトックス(Aボツリヌス菌毒素製剤)を注入して汗の分泌を抑制します。
治療時間はわずか10分程度であり、効果が現れるまでに2~3日程度かかるのが一般的です。
効果の持続性は3ヵ月~半年程度で、半永久的な治療ではありません。効果を維持するには定期的な通院が可能ではありますが、学校生活や運動への影響もほとんどなく、軽度のわきが症状に適しています。
▼パースピレックス(医療制汗剤)
パースピレックスは医療機関でのみ処方可能な、長時間持続型の医療制汗剤です。主成分の塩化アルミニウムが汗腺内で角栓を形成し、汗の分泌を物理的に抑制します。
1回の使用で2~5日間効果が持続し、汗や水に強いため入浴しても効果は持続します。12歳以上から使用可能で、週1~2回の使用で効果を維持できます。
子どものわきが手術は何歳から受けられる?
わきが手術の適応年齢は、治療法によって異なります。
手術による治療は成長期の影響を考慮する必要がありますが、体への負担が少ない治療法は比較的早い時期から選択できます。以下で、それぞれの特徴を見ていきましょう。
▼法的な決まりはない
わきが治療に関して、法律で定められた年齢制限は存在しません。実際に小学生や、中学生でへのわきが治療例もあり、「わきがを治療すること」そのものに何歳以上、という制限はありません。
ただし、未成年者の施術に関しては、必ず保護者の同意が必要となります。また、治療内容を本人が十分に理解できることも、重要な条件のひとつといえるでしょう。
医療機関によって独自の年齢制限を設けていることもありますが、これは安全性への配慮からであり、法的な制約ではありません。
また、治療方法によって、適用年齢が異なるケースもあります。
▼クリニックによって推奨年齢は異なる
医療機関によって、わきが治療の推奨年齢は大きく異なります。身体への負担や傷跡のリスクが比較的少ないとされる切らない治療法では12歳以上から可能とするクリニックが多い一方、手術を行う治療では16~18歳以上を推奨する医療機関が大半です。
これは、アポクリン腺の発達状況や治療方法によって、適切な治療開始年齢の判断が分かれるためです。特に、第二次性徴期に入る時期は個人差が大きく、早い子どもでは小学校高学年から症状が出現することもあります。
▼手術は高校生~大学生以上、そのほかでは小学生での適用なども増加傾向にある
従来の外科的手術(剪除法)は、アポクリン腺の発達が安定する高校生以降が推奨されています。これは思春期前の手術では再発リスクが高いためです。
一方、ボトックス注射やミラドライなどの切らない治療は、小学校高学年から施術可能な医療機関が増加しています。特に、第二次性徴期に入る小学校高学年からの治療を積極的に行うクリニックも出てきており、治療選択の幅が広がっています。
最近の研究では、早期治療でも再発率は成人と変わらないという報告もあり、子どもの年齢や症状に応じた適切な治療法の選択が可能になりつつあります。
子どものわきが治療の費用相場

わきが治療法別の費用相場を、以下にまとめました。
【剪除法】
・費用相場:40万円程度~
・保険適用:あり
【ミラドライ】
・費用相場:33万円程度(初回)~
・保険適用:なし
【ボトックス注射】
・費用相場:5万円程度(自由診療の場合)~
・保険適用:一部適用
【パースピレックス】
・費用相場:5,000円程度~
・保険適用:なし
わきが治療において、保険適用となるのは従来からの標準治療である剪除法のみです。
ただし、ボトックス治療については、15歳以上で腋窩多汗症と診断された場合に限り保険適用となり、その場合の費用は原則3割負担になります。それ以外の治療法はすべて自由診療となるため、全額自己負担です。
パースピレックスは医療機関でのみ処方可能な制汗剤ですが、保険適用外です。
子どもも受けられる手術以外の治療法から選ぶ
こどものわきが治療をするにあたって、再発リスクがあるかどうかは気になるところではないでしょうか。
ここでは、手術をはじめとするこどものわきが治療の再発リスクについて詳しく見ていきましょう。
▼第二次性徴が終わる前の治療なら再発する可能性がある
手術による治療(剪除法)の場合、適切に除去されたアポクリン腺は再生しないため、一般的に再発リスクは低いとされています。
ただし、第二次性徴期(10~16歳ごろ)はアポクリン腺が発達する時期です。この時期以前に手術を受けた場合、新しいアポクリン腺が形成される可能性があるため、症状が再び出現する可能性がある点には注意しましょう。
クリニックによっては、第二次性徴の途中での手術は推奨していないケースも見られます。
▼もともと繰り返しの施術が必要な治療もある
子どものわきがの治療法にはさまざまなものがありますが、すべての治療法が一度で完全に治療終了、というわけではありません。例えば、ボトックス注射は効果が数ヵ月~半年程度で、もともと定期的な再治療が必要です。
ミラドライは半永久的な効果が期待できるといわれる治療法ですが、成長期のこどもの場合は残存した汗腺が活発になる可能性があり、再発のリスクがあるのは手術と変わりありません。
こんなときは子どものわきが治療を検討してみよう

子どものわきが治療は、本人の意思を最優先に考える必要があります。周囲の大人が治療を強要することは避け、お子様自身の気持ちに寄り添いながら、以下のような状況が見られる場合に治療を検討してみましょう。
▼本人が気にしている
子どもが制汗剤やデオドラント製品を頻繁に使用したり、汗染みを隠すために濃い色の服を選んだりする行動が目立つようになってきた場合は、治療を検討するタイミングかもしれません。
特に夏場は、一日に何度も着替えたり、汗を過度に気にして行動を制限したりする様子が見られることがあります。
このような行動の変化は、わきがであることが本人の心理的負担になっているサインといえます。
▼学校生活に影響が出ている
においを理由にしたいじめや陰口、からかいなどにより、教室での居場所をなくし不登校気味になるなど、わきがによって学校生活に影響を及ぼすようであれば、治療を視野に入れる時期といえます。
いじめに対するケアをすると同時に、わきが治療の専門医への相談を検討しましょう。
友人・知人に指摘された
友人からの指摘は、その友人に悪気はなくても子どもに大きな精神的ダメージを与える可能性があります。特に思春期は他者からの評価に敏感な時期であり、自己肯定感の低下につながることも少なくありません。
友人との付き合いができなくなる、衝突してしまうなど、交友関係に支障が出るようになることもあるため、まず本人の気持ちに寄り添い、必要に応じて医療機関での相談を検討することをおすすめします。
▼遺伝しているように感じる
両親のいずれかがわきが体質の場合、子どもへの遺伝の可能性は50%程度とされています。家族にわきが症状がある場合は、子どもが第二次性徴期に入る前から症状の変化に注意を払い、兆候があれば早めの対応を検討してみてもいいでしょう。
ただし、遺伝傾向があるからといって、必ずしもすぐに治療が必要というわけではありません。症状の程度や本人の希望を考慮しながら、適切な治療時期を見極めることが大切です。
子どもも受けられる手術以外の治療法から選ぶ
成長の過程でアポクリン腺を取る施術を受けても、大人になれば再発するのでは……と心配する親御さんも多いでしょう。確かにその可能性は否定できません。
けれども、照射によってアポクリン腺を焼く「ミラドライ」などメスを入れない施術方法を選べば、複数の傷跡がわきに残ってしまったり、手術そのものへのお子さんの恐怖心など、心にも体にも大きな負担はかなり軽減されます。体臭によるいじめや心の傷のほうが、お子さんにとって大きなリスクとなってしまうかもしれません。
親御さんとしては「そのうち消えるかも……」とにおいに目を背けたくなるでしょう。しかし先述のとおり、わきがは成長に伴ってむしろ強くなっていくため、できるだけ早い段階で先手を打つことをオススメします。
当院では、症状に合わせ最適な方法をご提案します
当院では、お子さんがわきがであるかどうかのチェックはもちろん、最適な治療法をご提案させていただきます。
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